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2015年度第3回研究会:エマソンと情動の政治学

主催: 科学研究費・基盤研究(B)「マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀惑星的想像力」

2015年10月26日(月)18:30-20:30
成蹊大学10号館2階・第2中会議室

基調発表
佐久間みかよ(和洋女子大学)「エマソン言説の“character”が指示する超越する身体性/大陸性」

ワークショップ
Ralph Waldo Emerson, “The American Scholar “を読む

板垣真任(成蹊大学大学院博士前期課程)
渡邉藍衣(東京女子大学大学院博士後期課程)
細野香里(慶應義塾大学大学院博士後期課程)
コメンテイター:佐久間みかよ

本基盤研究(B)は、マニフェスト・デスティニーというレトリックの国際政治における意義を歴史的にたどると同時に、その心理的・精神的効果がアメリカ国民の情動を操作するナラティヴとしていかに機能してきているかに焦点をあて、地球規模でのアメリカの位置を読み直すことを目指している。

今回は、マニフェスト・デスティニーの宣言に先立つヤング・アメリカ運動の時代を背景に、当時のナショナリスティックな思潮に対し、アメリカの知識人がいかなる立ち位置を意識していたのか、情動や反知性主義の概念を補助線に、エマソンの政治学を再考する。

まず基調講演では、佐久間みかよ氏が、エマソンとドイツ思想ないしはヨーロッパ大陸思想との関係を整理する。エマソンは、“The Transcendentalist”のなかで、トランセンデンタリズムとは、ロックの懐疑的哲学に対し、カントに由来する直感的思想だとする一方、“The American Scholar”では、 “character is higher than intellect”と述べ、スウェーデンボルグの名をあげている。また、第二エッセイ集に収録された“Character”に注目するならば、エマソンが「キャラクター」という言葉の意味を抽象化することで、いかにヨーロッパ思想(大陸思想)を換骨奪胎したのかが見えてくる。

その後はワークショップ形式とし、エマソンの “The American Scholar”に焦点を絞り、若手研究者3名に自由なそれぞれの視点からテクストの分析を行って頂く。メルヴィルやホーソーンの文学にも多大な影響を与えたアメリカン・ルネッサンスの巨人を再検証するにあたり、フロアーからも活発なご質問、ご意見を頂ければ幸いである。

*どなたにも無料で参加していただけますが、会場整理の都合上、hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jpに事前のご連絡を下さいますようお願いいたします。

2015年度第2回研究会:“Form and Formlessness in Moby-Dick”

科学研究費・基盤研究(B)「マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀惑星的想像力」 後援:應義塾大学 G-SECアメリカ研究プロジェクト・慶應義塾大学藝文学会 

2015年6月30日(火)14:45-16:15 慶應義塾大学三田キャンパス西校舎515教室 (会場・開始時刻がいつもと異なります。ご注意下さい。)

講師:Samuel Otter(カリフォルニア大学バークレー校教授) 司会:巽孝之(慶應義塾大学文学部教授)

講師紹介:サミュエル・オッター教授はコーネル大学より博士号を取得後、1990年よりカリフォルニア大学バークレー校で教鞭を執る。ハーマン・メルヴィルを主とする19 世紀アメリカ文学を中心に、文学と歴史がいかに連動しているかを一貫して研究。代表的著作に、メルヴィルの第一長編『タイピー』から『白鯨』、そして『ピエール』までを扱い、彼が描く登場人物の身体がいかに人種などの歴史的言説と共振していかを明らかにしたMelville’s Anatomies (Berkeley: U of California P, 1999) がある。近年では研究対象をさらに広げ、フィラデルフィア近郊で書かれた文献群を対象にアメリカにおける人種と暴力、そして自由の関係性を精査したPhiladelphia Stories (New York: Oxford UP, 2010)を発表。また 2005年の国際メルヴィル会議のテーマを発展させ、Robert S. Levineとともに、メルヴィルと元黒人奴隷であり奴隷解放運動に身を投じたフレデリック・ダグラスとの関係を綿密な傍証を重ねながら論じる大著Frederick Douglass and Herman Melville (Chapel Hill: U of North Carolina P, 2008)を共同編纂し高い評価を受けている。

参加費は無料で、事前の申込は不要です。直接会場へお越し下さい。

2015年度第1回研究会:「メルヴィルのオリエンタリズム―『白鯨』の描く異教の世界」

科学研究費・基盤研究(B)「マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀惑星的想像力」
後援:グローバルセキュリティ研究所アメリカ研究プロジェクト

2015年5月19日(火)14:45-16:15
慶應義塾大学三田キャンパス西校舎515教室
(会場・開始時刻がいつもと異なります。ご注意下さい。)

講師:斎木郁乃(東京学芸大学准教授)
司会:巽孝之(慶應義塾大学文学部教授)

講師紹介:斎木郁乃。東京学芸大学准教授。メルヴィルとオリエンタリズムや南北戦争文学におけるジェンダー規範の撹乱をテーマとして研究を進める。Facing Melville, Facing Italy (U of Rome P, 2014), Melville and the Wall of the Modern Age (Nan’un-do, 2010)、それに“Whole Oceans Away”: Melville and the Pacific (Kent State UP, 2008)などに論文を発表している。

メルヴィルが晩年の詩の中でノスタルジックに南太平洋を称して「異教の海に浮かぶ真のエデン」と述べたように、『白鯨』においてもキリスト教的な世界観とそれを拡張しつつ批判する異教的な世界観が融合している。19世紀のアメリカでは、聖地巡礼のブームを通して、アジアとそこで暮らす人々が聖書を具現化する存在と見なされ、同時にマニ教やゾロアスター教などのアジアの異教にも関心が高まったと考えられ、『白鯨』もその歴史的流れを色濃く反映している。本論では、主にエイハブとフェダラー、イシュメイルとクィークェグの間をつなぐアジア的かつ異教的なものに焦点を当てながら、メルヴィルのオリエンタリズムについて一考察を加える。

2014年度第4回研究会:「近代小説と情動あるいは風景をめぐるいくつかの思弁」

科学研究費・基盤研究(B)「マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀惑星的想像力」

2015年2月23日(月)[(土)となっておりましたが誤りです。失礼しました]17:00~19:00 成蹊大学10号館2階第2中会議室

講師:遠藤不比人

講師紹介:成蹊大学文学部教授 博士(学術、一橋大学、2012年)。著書に『死の欲動とモダニズム——イギリス戦間期の文学と精神分析』(慶應義塾大学出版会、2012年)、編著書に『日本表象の地政学——海洋、原爆、冷戦、ポップカルチャー』(彩流社、2014年)、訳書に『死の欲動と<現代思想>』(みすず書房、2010年)、論文に “The Death Drive of Revolution/Counter-Revolution” (a): The Journal of Culture and the Unconscious 8:2 (2011-12) などがある。

2013年に出版されたFredric JamesonのThe Antinomies of Realismはいわゆる昨今の「情動理論」において異彩を放つ書物となっている。近代小説の根幹たるrealismを資本主義の発達段階に応じて変容する物語的形式と見なすのは彼としては当然であるが、その文脈で「情動」をrealismの歴史的発展における弁証法的否定性として措定していることは注目に値する。いわば近代的/資本主義的諸現実(矛盾)を象徴化する物語装置としてのrealismは、その歴史過程において自らを内部から否定する「過剰」として情動を宿すことになる。これはこれまでの情動理論が着目してこなかった問題系である。この議論を十分に歴史化すべくいくつかの補助線を引くことにより、近代(小説)と情動という主題に関して新たな視点を獲得したい。その補助線とはPaul de Manの論文“The Rhetoric of Temporality”と柄谷行人『日本近代文学の起源』である。Jamesonとde Manと柄谷の間に存在する不可視の対話を可視化することは、従来の「情動理論」への有効な介入になるのと同時に、その批評的なポテンシャルをより鮮明にすることにもなるだろう。またこの文脈において「風景(描写)」が近代小説において帯びる特殊な意味も明らかになる。ちなみにこの論点は部分的に拙稿「リアリズム/ユートピアの弁証法をめぐる情動論的断章——三浦玲一の追悼のために」『レイモンド・ウィリアムズ研究』第5号(2014年)において展開されている。

どなたにも無料で参加していただけますが、会場整理の都合上、hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jpに前日までにご連絡ください。

研究代表者:下河辺美知子(成蹊大学) 研究分担者:巽孝之(慶應義塾大学)・舌津智之(立教大学)・日比野啓(成蹊大学)

2014年度第3回研究会:「アメリカ演劇(史)の<明白なる運命(マニフェスト・デスティニー)>」

科学研究費・基盤研究(B)「マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀惑星的想像力」

2015年1月31日(土)17:00~19:00
成蹊大学10号館2階第2中会議室

講師:常山菜穂子

講師紹介
つねやま なほこ。慶應義塾大学法学部教授。文学博士(慶應義塾大学、2000年)。アメリカ演劇文化専攻。単著に『アンクル・トムとメロドラマ — 19世紀アメリカの演劇・人種・社会』(慶應義塾大学出版会、2007年)、『アメリカン・シェイクスピア — 初期アメリカ演劇の文化史』(国書刊行会、2003年)。

2000年代に入り、グローバリゼーションの現象と概念が意識的 / 無意識的に依拠してきた「世界の中心としてのアメリカ」の地位が揺らぐと、アメリカ研究にアメリカを脱中心化する動きが生まれた。アメリカ一国主義を内包する「グローバル」という概念を避けて、異質なるものや不可視化されてきたものをも包括する「惑星」の視点からアメリカ文学・文化を再読しようというのである。その際に「マニフェスト・デスティニー」の概念は、アメリカを国境や大陸の枠組みを越えた外部との関わりから捉える視点を提供するキーワードとなった。本発表ではこの新思潮をアメリカ演劇研究に援用し、アメリカ演劇をより相対的に捉えると共に、そのような作業を通して演劇史を再考する。
アメリカ演劇の歴史は、イギリス文化を受け継ぎ独自の演劇へと作り替えて、NYから西へと広めていく西漸運動だった。ところが、西海岸から海(たとえば、ハワイ)へと飛び出したとき、アメリカ演劇は太平洋の島特有の条件と交渉することを余儀なくされ、異種混淆のかたちへと変容した。このような西漸運動の果てに太平洋に生じていたアメリカ演劇を考え、さらにこその再発掘をきっかけにアメリカ演劇史を再考したい。

どなたにも無料で参加していただけますが、会場整理の都合上、hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jpに前日までにご連絡ください。

研究代表者:下河辺美知子(成蹊大学)
研究分担者:巽孝之(慶應義塾大学)・舌津智之(立教大学)・日比野啓(成蹊大学)

2014年度第2回研究会:「女性旅行者と地政学的想像力」基調発表・ワークショップ

科学研究費・基盤研究(B)「マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀惑星的想像力」

2014年12月5日(金)18:30~20:30
成蹊大学10号館2階第2中会議室

基調発表
大串尚代(慶應義塾大学)
「荒野における独立宣言――セジウィックとチャイルドの西部」
ワークショップ
Catharine Maria Sedgwick, “The Great Excursion to the Falls of St. Anthony”を読む

小泉由美子(慶應義塾大学大学院博士課程)
内藤容成(グラスゴー大学博士課程修了)
阿部暁帆(成蹊大学非常勤講師)
コメンテイター:大串尚代

 本基盤研究(B)は、マニフェスト・デスティニーというレトリックの国際政治における意義を歴史的にたどると同時に、その心理的・精神的効果がアメリカ国民の情動を操作するナラティヴとしていかに機能してきているかに焦点をあて、地球規模でのアメリカの位置を読み直すことを目指している。
 今回は、19世紀中葉、まさしくマニフェスト・デスティニーという言葉がジョン・オサリヴァンによって使用された当時のアメリカに注目し、西漸運動を押し進める国家の地政学的諸相に思いを馳せた女性作家の想像力について考える。そこから見えてくるのは、交通手段の進歩、先住民の「消滅」、奴隷制の軋みなど、近代国家アメリカが映し出す多彩な風景にほかならない。
 まず基調講演では、大串尚代氏が、同時代に作家として活躍したキャサリン・マリア・セジウィックとリディア・マリア・チャイルドが作品内で著した西部への視線を論じる。マサチューセッツ州に生まれ、その人生のほとんどをニューイングランドで過ごしたこのふたりの作家が西部になにを見たのかを考察する。
 その後はワークショップ形式とし、セジウィックの “The Great Excursion to the Falls of St. Anthony”に焦点を絞り(テキストはここからダウンロード可能)、若手研究者3名にそれぞれの視点から分析を行って頂く。17世紀末、ヨーロッパからの神父/探検家が、ダコタ族に捕えられた際に発見し、その守護聖人の名をつけたセント・アンソニーという象徴的な滝をめぐるエッセイを考察するにあたり、フロアーからも活発なご質問、ご意見を頂ければ幸いである。

どなたにも無料で参加していただけますが、会場整理の都合上、hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jpに前日までにご連絡ください。

研究代表者:下河辺美知子(成蹊大学)
研究分担者:巽孝之(慶應義塾大学)・舌津智之(立教大学)・日比野啓(成蹊大学)

2014年度第1回研究会:ワークショップ「マニフェスト・デスティニー以後の先住民—ジェラルド・ヴィゼナー文学を中心に—」

*同日に予定されていた北米作家ジェラルド・ヴィゼナー氏の講演会は、健康問題により作家が急遽帰国したため中止となりましたが、ヴィゼナー文学をめぐるワークショップは予定通り実施致します。またワークショップ終了後、別会場にてレセプションを予定しております。(会費は3000円程度の予定)

2014年7月17日(木)18:00-19:30
慶應義塾大学三田キャンパス 東館4階セミナー室

司会:巽孝之(慶應義塾大学文学部教授)
討論者:宇沢美子(慶應義塾大学文学部教授)・有光道生(慶應義塾大学法学部専任講師)・加藤有佳織(成蹊大学非常勤講師)・牧野理英(日本大学准教授)
参加料:無料
申込:不要(直接会場へお越し下さい。)

【交通アクセス・キャンパスマップ】 http://www.keio.ac.jp/ja/access/mita.html