主催:科学研究費・基盤研究(B)「マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀惑星的想像力」
講師:白川恵子(同志社大学)
2017年12月11日(月)18:30-20:30 成蹊大学10号館2階・第二中会議室
講師紹介
同志社大学文学部教授。慶應義塾大学文学部英米文学専攻博士課程修了(博士)。共著にWays of Being in Literary and Cultural Spaces(2016、Cambridge Scholars P)、『幻想と怪奇の英文学II――増殖進化編』(2016、春風社)、『アメリカン・ロードの物語学』(2015、金星堂)、『エスニック研究のフロンティア』(2014、金星堂)、『アメリカ文学における「老い」の政治学』(2012、 松籟社)、『アメリカ―<都市>の文化学』(2011、ミネルヴァ書房)など。
本基盤研究(B)は、マニフェスト・デスティニーのレトリックの国際政治における意義を歴史的にたどると同時に、その心理的・精神的効果がアメリカ国民の情動を操作するナラティヴとしていかに機能しているかに焦点をあて、地球規模でのアメリカの位置を読み直すことを目指している。
モンロー主義を下支えとしたジョン・L・オサリバンのテキサス「併合論」が、ヨーロッパの干渉排除とアメリカ領土拡張の一実践例を神意と結びつけるレトリックによって、大きな影響力を発揮したのは言うまでもない。しかし、もう一点、瞠目に値するのは、オサリバンが、当時の奴隷州拡張問題との関連づけを巧みに回避せんと腐心した文言や、奴隷制が仮に将来的に解消された暁には、解放奴隷を中央および南アメリカ地域に移送する可能性――いわば排除の論理でもあり、また二重の植民化論理でもある――を示唆した件であろう。テキサス併合によって奴隷制拡張論議が開くのは「明白」であるにもかかわらず、オサリバンは「明白な運命」という語の背後にそれを封じ込めようとしたと考えられる。
とはいえ、そもそもアメリカは、1845年よりもはるかに早い段階から、先住民殲滅にせよ奴隷制論議にせよ、人種に対する絶え間ない政策を強いられ続けてきたし、独立は支配と抱き合わせで想起されてきた。拡大膨張は、建国・共和政期にはすでに進捗していたが、植民地時代ですら、英領アメリカはヨーロッパ列強の叛乱教唆を含む人種問題と格闘し、領土保全のために苦慮してきたはずである。本発表では、英領植民地時代(具体的には、17世紀末から18世紀半ばにかけて)、複数箇所で勃発した奴隷叛乱/陰謀事件の実例から、スペインとの戦いを交えて何らかの関連を模索したい。具体的にはニューヨーク、ストノの事件を扱う予定であるが、その過程でバルバドスの事例も参照したい。
研究代表者:下河辺美知子(成蹊大学)
研究分担者:巽孝之(慶應義塾大学)・舌津智之(立教大学)・日比野啓(成蹊大学)
どなたも歓迎ですが、会場整理の都合上、hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jpに前日までにご連絡ください。