2016年度第3回研究会:翼の福音、あるいは呪われた凶器——リンドバーグと飛行の物語

主催:科学研究費・基盤研究(B)「マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀惑星的想像力」

講師:石原剛(早稲田大学)

2017年3月10日(金)15:30-17:30<開始時刻が通常より早いのでご注意ください>

成蹊大学10号館2階・大会議室

講師紹介

2003年、テキサス大学オースティン校アメリカ研究科博士課程修了、アメリカ研究博士(Ph.D.)。専門はアメリカ文学・文化。早稲田大学教育学部教授。著書にMark Twain in Japan(アメリカ学会清水博賞)、『マーク・トウェインと日本』(東北英文学会賞、日本児童文学会奨励賞)、『マーク・トウェイン文学/文化事典』(共著)などがある。2016年、NHKラジオ「文学の世界―マーク・トウェイン」担当講師。

本基盤研究(B)は、マニフェスト・デスティニーのレトリックの国際政治における意義を歴史的にたどると同時に、その心理的・精神的効果がアメリカ国民の情動を操作するナラティヴとしていかに機能しているかに焦点をあて、地球規模でのアメリカの位置を読み直すことを目指している。

古代ギリシャの時代より、かねてから空は神の領域とされてきた。飛行という手段を持つまで、人間は、数万年に亘り天なる空を見上げながら、そこに神への畏れを感じるほかなかった。しかし1903年、全くのダークホースであったライト兄弟が、空を自由に飛翔するための道具を発明した後、人類は後戻りできない神なる領域に足を踏み入れることになる。巨大な空間の征服こそ神が望んだ文明の福音、すなわちマニフェスト・デスティニーであると考えていたアメリカ人にとって、空を征服することは神が約束した「開拓」という仕事の総仕上げとでも呼べるものであった。

本発表ではチャールズ・リンドバーグが著した自伝的回想記The Spirit of St. Louis (1953年)に刻み込まれた飛行を巡る様々なアメリカの物語を掬い上げていく。フロンティアの物語の中に自己を位置づけようとする態度、飛行という行為に色濃く反映された宗教性、地上に展開する世界への空間認識、飛行に伴う時間感覚のズレ、さらには、飛行機というアメリカの発明品で新世界文明の中心地ニューヨークから旧世界文明の中心地パリに時空を超えて乗り込んでいくことの文化的意味などについて論じる。最終的には、人類進歩の象徴であるはずの飛行機が、人類史上最大の大量殺戮の道具と化すことへのリンドバーグの怖れに触れることで、マニフェスト・デスティニーの悲劇的運命の象徴として、リンドバーグと飛行機の関係を考えてみたい。

研究代表者:下河辺美知子(成蹊大学)

研究分担者:巽孝之(慶應義塾大学)・舌津智之(立教大学)・日比野啓(成蹊大学)

どなたも歓迎ですが、会場整理の都合上、hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jpに前日までにご連絡ください。

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