主催:科学研究費・基盤研究(B)「マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀惑星的想像力」
2017年2月24日(金)18:30-20:30
成蹊大学10号館2階・第2中会議室
基調発表「名もなき者たちの物語―寄せ集めとしてのU. S. A.三部作」越智博美(一橋大学)
ワークショップ“The Body of an American”を読む
徳永裕(成蹊大学大学院博士前期課程)
志賀俊介(慶應義塾大学大学院博士後期課程)
桐山大介(ニューヨーク州立大学オールバニー校大学院博士後期課程)
コメンテイター:越智博美
本基盤研究(B)は、マニフェスト・デスティニーというレトリックの国際政治における意義を歴史的にたどると同時に、その心理的・精神的効果がアメリカ国民の情動を操作するナラティヴとしていかに機能してきているかに焦点をあて、地球規模でのアメリカの位置を読み直すことを目指している。
今回は、第一次大戦を経験した「ロスト・ジェネレーション」の一人とされるJohn Dos Passosに光を投じ、 戦争と国家をめぐる諸問題を掘り下げる。彼はしかし、その代表作であるU. S. A. 三部作を、狂騒の20年代ではなく、大恐慌の30年代に発表した。資本主義や愛国の情動に翳りが見え始める中、作家の社会意識はアメリカ合衆国の輪郭をどのように再定義したのであろうか。
まず基調講演では、越智博美氏が、U.S.A.三部作を多様な文章スタイルと多様な人からアメリカ合衆国を表象しようとした壮大な実験であると捉え、作品の諸要素を整理する。最初と最後に“U.S.A.”および”Vag”という短い文章を置くことで別個に発表された三作品は三部作しての結構が与えられているが、そこに挟まれた三作品が想像するアメリカ合衆国とはいかなるものであったかの考察を試みる。
その後はワークショップ形式とし、Dos Passosの “The Body of an American”に焦点を絞り、若手研究者3名に自由なそれぞれの視点からテクストの分析を行って頂く。1919 (1932年)の最後を飾るこのスケッチには、歴代大統領の人気ランキングで常に最下位を争うHardingの演説が引用されているが、今後彼のライバルとなるであろう新大統領が就任演説を終えた2017年の今、「アメリカ人の身体/遺体」は我々に何を語りかけるのか?
研究代表者:下河辺美知子(成蹊大学)
研究分担者:巽孝之(慶應義塾大学)・舌津智之(立教大学)・日比野啓(成蹊大学)
*どなたにも無料で参加していただけますが、会場整理の都合上、hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jpに事前のご連絡を下さいますようお願いいたします。